ほしいと思える時計と出会って買った時計が、すぐ止まってしまったり、異常な動作をしていたらとても凹みます。
壊れた!と凹む前にまずは落ち着きましょう、操作方法が違うだけかもしれませんよ?
しかし、普段何気なくやっていることが故障の原因となっていることもあるので、その時は何が時計にとってダメなのか知っておきましょう。
時間が進む、もしくは遅れる
時間が進む、もしくは遅れるといった精度異常で時計修理店に持ち込まれるケースは少なくありません。
電池式や電波時計と比べると、どうしてもある程度の進みや遅れは出てしまうのが機械式時計です。
故障と思って時計修理店に持ち込む前に、一般的な機械式時計の精度を知っておきましょう。
機械式時計の精度
時計の遅れや進みのことを精度といい、日に何秒程度の差が出るかを表すことを日差といいます。
一般的な機械式時計の精度は日差-10~+20秒ほどが想定されます。
年代を経たアンティークであれば日差-30秒~+60秒程度が許容範囲。
この範囲のうちは故障ではなく、機械式時計にとっては想定できるズレと思いましょう。
また、機械は姿勢差※や温度差、巻き上げ具合でも影響を受けるため、長年時計を使っているとこの許容範囲を超えることもあります。
※腕に着けているときに様々な向きになるさま
時間が遅れるor進む時の対処法
時間が許容範囲を超えて、遅れ進みが出る場合はどのようにすればいいのでしょうか?
いろいろな原因が考えられますが、主に磁気帯びと部品に異常があることが考えられます。
時計の部品は金属でできているので、磁石の近くに置くと磁化して精度に影響が出ます。
特に時計の心臓部とも呼ばれる”ヒゲゼンマイ”は磁気を帯びやすいため注意が必要です。
ヒゲゼンマイが磁気を帯びると一時的な遅れや進みに加え、止まる場合もあり、精度を大きく狂わせます。
現代社会は身の回りの至る所に磁気を発生させるものが存在します。
パソコンやスマートフォン、バッグの留め金や冷蔵庫のパッキン部分、磁気ネックレスや磁気枕、電子レンジや冷蔵庫などの家電製品、等々。
その中でも最も身近で危険なのはパソコンやスマートフォンです。
時計を外す時にスマートフォンの上に時計を置いたりすればすぐに磁気を帯びてしまいます。
磁力は距離の2乗に反比例するため、できるだけ近づけないようにすることが時計にとって最良です。
目安としましては30cm以上離すように気を付けましょう。
磁気を帯びてしまった時計に関しては自然に戻ることはないので、おかしいと思ったらすぐに時計修理店へお持ちください。
軽い磁器帯びであればすぐに脱磁できたりします。
知らずのうちに外部からの衝撃で部品に不具合が起きていたり、機械内部の潤滑油が劣化し、精度に大事な歯車などがスムーズに機能しなくなることがあります。
これは定期的にオーバーホールをしていれば早期発見できます。
時計を分解し部品を確認、新たに潤滑油を注すなどといった対処法を時計修理店でしてもらうことにより、また順調に時を刻むことになります。
あまりにも摩耗が激しかったり部品に変形が見られたりする場合は部品交換が必要になり、修理の値段も高額になってしまいます。
それを防ぐためにも定期的なオーバーホールをオススメします。
時計がすぐに止まる
いくつか原因が考えられますが、まず疑うべきはゼンマイの巻き上げ不足による駆動力不足です。
自動巻の時計は身に着けていれば、ずっと動き続けるものだと勘違いしている方もいらっしゃいます。
自動巻の時計は内蔵されたローターが腕の動きで回転し、ゼンマイを巻き上げる仕組みになっております。
腕から外すことが多かったり、腕の動きが少ないと時計を駆動させるための十分な動力が得られず、精度が乱れたり、止まってしまいます。
1日最低でも8~10時間ほど身に着ける必要があるのです。
腕から外すことが多い方やデスクワークなどで腕の動きの少ない方は、長時間身に着けていても駆動力不足になりますので、毎朝ゼンマイを巻き上げ方向に20~30回ほどゆっくり巻き上げてからご使用ください。
駆動時間は時計により異なりますが、一般的な機械式時計はゼンマイが巻き上がった状態で48時間程度持続します。
メーカーが発表している駆動時間は、時計に一切の負荷を与えずに測定している最長時間になりますので、実際のご使用ではもう少し短いと思っておいて良いでしょう。
ゼンマイをしっかり巻き上げた状態で大幅に所定の駆動時間を下回る場合は、ゼンマイ切れや部品破損などの可能性があるので時計修理店に見てもらいましょう。
時計から異音
振ると時計内部から何か変な音がする。
こういったことも大変多いですが、内部機械のローターが回転しゼンマイを巻き上げる際の回転音である可能性が高いです。
一部ムーブメントでは、通常よりも大きめの音を出す仕様になっていることもあります。
音が以前より大きくなった時は時計修理店に持っていく必要があります。
内部機械の油が切れて、スムーズな回転をしていないために音を出している可能性があります。
一度分解して、オーバーホールを行うことをオススメします。
カタカタ音が不規則になってしまっている場合は、外部からの衝撃などで部品が破損している可能性が考えられます。
このケースは他の部品を傷つけてしまうことにも繋がるので、お早目に点検・修理に出すことをオススメします。
0時にカレンダーが回らない
機械式時計が日付を変える時、±10分ほどの猶予があるのが一般的。
カレンダー板がゆっくり回転して日付が変わりますので、時間次第では日付窓に斜めに数字が2つ見えることがあります。
またモデルにより1時間程度の誤差があったり、デイトジャスト機能を持つ時計はカレンダー板にスプリングなどを加えることで瞬時に切り替わる仕様になっております。
昼の12時と夜の0時を勘違いしている可能性もあり、一見12時間表示に見える時計も24時間認識となっており、昼と夜を区別しております。
この場合、リューズを引いて日にちと時間を合わせ直しましょう。
機械式時計には“カレンダー操作禁止時間帯”があります。
その具体的な時間帯は午後9時から午前3時。
この時間帯はカレンダー板の歯車と時間表示の歯車が噛み合っていて、時計自体が自らの力で日付を変更しております。
この時間帯に無理に日にちを変更すると歯車が欠けてしまい、修理が必要になりますのでご注意ください。
クロノグラフ針が0時位置に戻らない
大体のクロノグラフは2時側についたプッシュボタンを押すとスタートし、再び押すとストップします。
計測が止まった状態で4時側のプッシュボタンを押すと、リセットされクロノグラフ針が0時位置に戻ります。
リセットの際にクロノグラフ針が0時位置に戻らないといった事例があります。
クォーツの場合は簡単な操作で元に戻すことができます。
ほとんどのモデルで、リューズを一段引き出し、上下どちらかのプッシュボタンを押す、またはプッシュボタンを同時に長押しするとクロノグラフ針が動き出し、0時位置に手動で調整することができます。
ただしモデルによって操作方法が異なりますので、詳細は取扱説明書をご覧下さい。
機械式クロノグラフの場合は部品が複雑になっているので手動で調整ができないことがあります。
リセット時に毎回違う位置に戻ってしまう場合はハカマと呼ばれる針を支える筒状の部品が緩んでいたりズレていたりしている可能性があります。
精度には大きな影響はないのでオーバーホールの時に一緒に締め直してもらうと良いでしょう。
針の位置がズレる
12時に時刻を合わせたいのに短針と長針が重ならず、微妙にズレていることがあります。
これは“バックラッシュ”と呼ばれる機構が原因で起こります。
バックラッシュとは、歯車と歯車の隙間のことをいいます。
駆動力となる2つの歯車が正しく噛み合うには、ある程度の隙間がなくてはいけません。
これがないと歯と歯がピッタリとくっついてしまい、摩耗や余分な力がかかってしまう原因になります。
回転もスムーズにいかない、熱膨張を考慮した時全く動かない、というデメリットだらけになります。
精密機械である時計ならではの便利機能がバックラッシュですが、その副作用として隙間ができてしまうが故に針がずれてしまう現象に繋がってします。
1秒ごとに針が動くため、機械式時計よりも電池式時計でより目立ちやすいかもしれません。
多少のズレはこのバックラッシュが原因と考えられており、ほとんどのメーカーが許容範囲としているので、あまり神経質になる必要はありません。
大幅にずれてしまう場合は針の取り付け部分が緩んでいたり、内部機械が劣化している可能性があります。
時計を落とした時に針が緩んでしまった可能性があるため、その時はオーバーホールを行う必要があります。
ブレスコマが外れた
ピンはコマに強く圧入されているので通常は外れはしませんが、摩耗・衝撃・錆による腐食などで外れてしまうことがあります。
一箇所外れてしまうと他のコマも緩んでいる可能性がありますので、すべてのコマを確認する必要があります。
もしもコマが緩んでいるだけなら締め直すことで元通りになります。
ただただ外れただけではなく、コマ自体が破損してしまった場合は交換が必要で別途費用が掛かります。
風防にキズがついてしまった
時計だけに限りませんが長年時計を使用しているとどうしてもキズがついてしまいます。
愛用してきた証なのでキズ1つでも味わい深い思い出です。
ですが風防にキズがついてしまっては不便です。
視認性が悪くなるのはもちろん、ケースやブレスより目に入ってきてしまいます。
小さいキズならば市販の風防用研磨剤で、ご自身で磨いてキズを取ることができます。
しかし深いキズの場合は交換しなくてはなりません。
最近はサファイアクリスタルというキズがつきにくいガラスを使用したモデルが出回っています。
万が一キズがついてしまった場合は研磨ができないため交換が必要で、費用は大体1~2万円程度になります。
ステンレス製の外装部分にサビ
一般的にステンレスは空気に触れている部分はサビにくいといわれております。
しかし、ブレスの接合部などの空気に触れにくい部分に汗や埃が残っているとサビが発生してしまうことがあります。
小さいサビならワイヤーブラシで削り取ったり、サビ取り剤を使うなど、セルフケアで対応することも可能です。
少しでも不安な方は修理店に出すことをオススメします。
こういったケースは普段のお手入れで十分防げるトラブルになります。
日常で水に濡れたり汗をかいた後はしっかり水分を拭き取ることが大切です。
時計裏面に張られた保護用シールを付けたままにしている方がたまにいらっしゃいますが、シールと時計本体の隙間に汗や埃が溜まってサビの原因となるので、ご使用前に剥がすことをオススメします。
ガラスが曇る
時計の内部は真空ではなく空気があり、わずかながら湿気を含んでおります。
防水機能が保持できていても温かい室内から気温が低い外に出た時、内部の湿気が一時的に水滴となりガラス面に付着して曇った状態になることがあります。
曇っている状態がすぐ消えたり、時計本体の温度が周囲の温度と近くなると消える時には、時計の機能に問題が起こることはございません。
曇っている状態が長く続く場合には水が内部へ侵入している恐れがあります。
よくあるのはリューズを引きっぱなしにしたまま保管していたケース。
長時間リューズを引きっぱなしにしておくと空気中の水分や埃が内部に侵入し、ムーブメントにサビが発生する恐れもあります。
またガラスが曇ってもご自身でガラスを取る事は絶対にしてはいけません。
時計は難しい構造になっているのと、専用工具でなければ無理です。
いろいろなタイプがありますので時計修理技能士でないと修理はできません。
ガラスの曇りで不安な時には時計修理店に持ち込んで相談してみましょう。
防水時計なのに水洗いをして動きがおかしくなった
時計を水洗いしても大丈夫か否かは時計の防水性能次第になります。
一般的には100m防水が基準になっていて、それ以上であれば水洗いは問題はなく、それ以下であれば水洗いはしてはいけません。
しばらくオーバーホールをしていない時計に関してはパッキンの劣化や、古い時計に関してはそもそも防水性能が失われている可能性があるので、100m防水だから安心というわけではありません。
水道の蛇口から出る水は水圧が高いのでダイバーズウォッチでも水が浸入してしまう可能性があります。
安全に水洗いをする場合は桶や器に水を貯めてから時計を洗うことをオススメします。
お湯に浸けると故障する
ダイバーズウォッチであれば温度に関係なく時計を濡らしても大丈夫だと思われがちですが、お湯は絶対に避けなければいけません。
お湯の場合は蒸気が発生し、蒸気に含まれる小さい粒子が時計に入り込んでしまうのです。
いくら防水性能に優れていても粒子の侵入を避けることは困難です。
時計は温まることにより金属が膨張してしまうので、時計内部に粒子が侵入しやすくなります。
冷水と比較すると故障のリスクが格段に増しますので、入浴の際につけっぱなしにしたり、お湯で時計を洗浄することは止めましょう。
リューズが極端に重くなっている
リューズを巻く際に極端に重さを感じる時は油切れの可能性が高いです。
機械式時計は100を超える部品の集合体で、その1つ1つに専用の油を塗布することで部品の摩耗を防いでおります。
油は乾燥や凝固によって徐々に役目を果たさなくなってきて、油切れになると金属疲労や部品摩耗が起こります。
リューズが極端に重い時は、リューズに関する歯車の油が切れている可能性が高いです。
毎日炎天下の中で時計を身に着けるいう使い方をした時にムーブメント内部の機械油が蒸発によって劣化してしまう可能性があります。
夏の終わりにオーバーホール依頼が増えるのは油が切れやすくなる季節だからです。
まとめ
時計は基本的に常に身に着けているので、気を付けていても些細なことが原因で調子が悪くなってしまうことがあります。
おかしいと感じたら修理店にお持ち込みや、修理店に郵送するなどしましょう。